記憶の中のソファー

カリモク「Kチェア」
1月5日のAfterhoursでも少し触れましたが、19歳の時に一人暮らしを始めるまで私の部屋は団地の中の小さな3畳間でした。襖を開けた隣の部屋には弟と父の部屋が、もう一方の扉を開けると母の部屋と言っても言い過ぎではない台所。その3畳間には勉強机と洋服ロッカー、本だなと今ほど小さくはないミニコンポがまさにぴったりと収まっていて、空いたスペースはこれまたぴったりと布団がひけるくらいの大きさでした。

その3畳間から解き放たれて、晴れて一人暮らしとなった私は、できるだけ広く使おうと家具やモノを増やしませんでした。6畳とは言っても3畳の倍ですからベッドとテレビとローテーブルだけなら、かなり広々と優雅な気持ちになれたものです。
一つ気に入らなかったのが床での生活で、ぺったりと床に座ると何をやるにもいちいち立たなきゃいけない。特にギターやベースはあぐらをかいて弾いてるととても疲れるので、ちょっとした一人掛けの低いイス(ソファー)が欲しかったんです。ずぅっと欲しかったんですが、そのうちにモノも次第に増えるし、何しろ欲しいと思えるソファーを見つけることができなかったのが、いつまでも買えなかった1番の理由でした。

私はそんな家で育ちましたから、ソファーなんて家に一度もあったことがないし、友達や親戚の家でもあまり見た記憶がない。でも、私の中では「ソファーといったら、これ」というイメージが何故だかずっとあって、いつかソファーを買うならそれと決めていました。現実には一度もそんなソファーを見たことはなかったはずなんですが。

一人暮らしを初めて11年目にやっと部屋が一つ多いマンションを借りることができました。引っ越しの時に楽器や機材をほとんど処分したので、収納スペースも多くなってやっとソファーを置く場所ができます。しかし、肝心のあのソファーが見つからない。積極的に探してたわけじゃないので、なんなんですが見つからない。せっかく増えた一部屋には、テレビとかなり小さくなったミニコンポしかない時期が長く続きます。

そして、ある日やっと私はまさに欲しかったものと同じソファーを、山手通り沿いの古家具屋の店先にあるのを発見しました。仕事中でしたが乗っていたトヨタのライトエースをすぐに停めて、16000円をカードで払ってそのままライトエースに積んで家に持って帰りました。

どこで見たのか分からないけど、私にとってはソファーと言えばこのソファーだったんです。
この高さでこの木の色、そして皮じゃない背もたれと座面。背もたれの裏には「KARIMOKU」と書かれてるのを発見。一人掛けのソファーを1脚、テレビの前に置いて一人暮らし12年目にしてその日から念願のソファーライフが始まりました。

ところが、しばらくするとあちこちのカフェでこのソファーを見るようになりました。「D & DEPARTMENT」と言うリサイクルショップが「カリモク60」として販売していたのです。サイトを見ると60年代にデザインされたまま、いまでも作られているソファーだと書かれていました。ということは、子供の頃にどこかで見ているんだろうなぁ。だから、私のソファーはこのソファーなんだろうと。少し謎が解けました。

そして今、我が家には3つのカリモク の1シーターの「Kチェア」があります。私が持っていた一つを除く、2つは隊長が6畳一間のアパートで一人で使っていたものです。二つとも中古、値段は1脚12000円。下北沢の中古家具屋で見つけて、「これこれ、このソファーを探してたのだよ」とその場で2脚買ったそうです。

ご飯を食べるにはちょっと低いんですが、本を読んだりしてくつろぐには丁度いいソファー。諦めて欲しくもないソファーを買わなくて良かったと思っています。

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横田茂 / Shigeru Yokota
コーヒーと音楽と山歩きが好きです。整理整頓、夕食の準備が日課。フリーのウェブデザイナー。
Afterhoursではコーヒーとデザインを担当

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